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30代サラリーマン応援ブログ。テーマ「仕事」「海外赴任・異文化」「英語学習」「家族」など

タイの低すぎるエアコンの温度設定からの洞察

タイは雨季に突入した。猛烈な暑さの暑季が終わり、いつ訪れるかわからない豪雨と落雷にハラハラする季節が始まっている。雨は降るが、気温は高い。熱帯のタイでは、1年を通して半袖で過ごせてしまう。

ぼくはいつも、紺のカーディガンを持ち歩いている。もちろん外で羽織ると汗がしたたり落ちるほど暑いが、事務所や車中やお店のなかでは、ときにカーディガンがないと耐えられないほど震えてしまう。

エアコンから吹き出る冷気が、からだの芯まで凍えそうなほどの気温で設定されている。

年中暑いタイでは、寒いことは「善いこと」だそうだ。つまり、タクシーもデパートも飲食店も、そしてタイ航空の機内も、からだが凍えるほどの冷気を提供することを「良いサービス」だと考えている。

★★★

タイ人スタッフが、業務報告書を作成した。

その報告書をレビューすると、詳しく報告すべき内容の記述が不十分と考えられたので、ぼくはその追記すべき事柄を彼に伝え、再提出を促した。

当然資料中の記載スペースは限られるから、ある特定の内容の記述を増やすには、ほかの部分の記述を削るなどして、全体の構成を見直す必要があった。

再提出された資料には、指示した通りの内容が、見事に詳しく追記されていた。

けれども、文字が読み取れないほど、小さい。全体の構成を変更せず、余白スペースに詰め込めるだけ追加の記述を詰め込んだようだ。

フォントサイズが塵のように小さく、拡大鏡がないと読めない。

★★★

先日、会議のために訪れた会場には、2タイプのゴミ箱が設置されていた。可燃ごみとリサイクルごみ(プラスチックや缶など)だった。

休憩時間で提供された軽食を食べ、ごみを捨てようとそれらのゴミ箱を覗くと、可燃ごみにはプラスチックが混ざり、リサイクルごみに食べ残したパンなどが平然と混じっている。

本当かどうか知らないが、どちらにせよあとでごみの分別をする仕事の人たちがいるらしい。2タイプのゴミ箱は、「ごみの分別」を人びとに意識づけるための仕掛けだったのかもしれないが、機能しているようには見えない。

★★★

エアコンの冷たすぎる風で、凍えている人たちがいる。タイ人には、寒さに極端に強い人もいるが、寒がっている人の姿もよく見かける。

塵のように小さいフォントで報告書を作成したタイ人スタッフは、その報告書を読む人間が、そこに書かれた文字を読み取るのに難儀したとしても、全く意に介さない。彼は上司が指示したことに対して、誠実に対応したと考えている。

ごみの分別を促す会場のゴミ箱は、その指定した廃棄物とはべつのごみで埋め尽くされている。どのごみをどちらのゴミ箱に捨てるべきかを意識的に選択しているようには、とくに見えない。

これらすべてのストーリーは、「提供者の視点」のみで動いている。

ものごとやサービスを「提供する側」が満足し、「提供される側」が不満を抱える。つまり、ものごとやサービスを「提供される側」が満足したかどうかは、「提供する側」にとってあまり重要ではないようだ。

タイに限った話、というわけではない。

ぼくたちには、ものごとやサービスを「提供される側」に人たちが、十分に満足しているか、そのニーズに応えているか、余計な手間や労力をかけさせていないか、を常に視野に入れる必要がある。

ぼくはまた、紺のカーディガンを持って外に繰り出している。

エアコンの風は、今日も冷たい。