タイの完熟マンゴーと美容師と市場原理
この前、休日出勤をした帰りに、専属ドライバーさんが袋いっぱいのマンゴーをくれた。タイ駐在員は、勤務地にもよるけれど、車と専属ドライバー付きの待遇になることが多い。
日本に一時帰国したとき、必ず日本のお菓子をドライバーさんにお土産として渡しているから、その御礼なのか、休日に仕事をしたぼくに対する労いの気持ちだったのかはわからない。
単身なのでひとりで食べきれるか正直不安があったけれど、「ありがとう!」と御礼を言い、ぼくは袋いっぱいのマンゴーを部屋に運んだ。
どう切っていいものかもわからないまま、包丁で何とか切り分けて食べると、完熟マンゴーの甘みが口のなかいっぱいに広がった。ぼくは病みつきになって、1日1個を食べ続け、あっという間になくなってしまった。
日本で同じ味わいの完熟マンゴーを食べるなら、きっと1個1,000円以上はする。タイでは、旬の時期はその10分の1以下の値段で、決して所得の高くないドライバーさんでも気軽に買える。
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この前、髪を切りに行った。
バンコク市内は美容院も多いけど、日本人の美容師さんのいないお店に行く勇気はない。言葉が通じないという問題もあるし、技術面でも、日本のトレンドを踏まえたヘアスタイルには、当然ならない。一度タイ人の美容師さんに切ってもらったことがあるけれども、やっぱりタイ人っぽいスタイルになる。
日本には星の数ほどの美容師がいて、きっと市場は飽和状態になっている。タイでは、日本人の美容師さんのいるお店をインターネットで必死に探し、ぼくは高いカット料金を喜んで支払っている。
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需要と供給で、市場は成り立つ。
日本では高級フルーツとして滅多に食べることのないマンゴーが、タイでは日常的に安く食べられ、日本では飽和状態で人件費削減の憂き目にあっている美容師さんたちは、バンコク在住の日本人を顧客にして、より良い条件で仕事をしている。
ぼくが会社員でなく、(美容師さんみたいに)手に職を持っていたなら、「海外在住の日本人」を顧客ターゲットに設定するのもいいな、とリズムよく切り込まれていく髪の毛を鏡で見ながら、ぼんやりと考えていた。
海外には、ブルーオーシャンがまだまだ広がっている気がする。