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30代サラリーマン応援ブログ。テーマ「仕事」「海外赴任・異文化」「英語学習」「家族」など

果物の王様「ドリアン」を食べた

ぼくはタイに赴任している。

いつものように仕事をしていると、タイ人の女性スタッフがぼくの机にやって来て、いま冷蔵庫にドリアンを冷やしているので帰るときに持って行ってください、と言った。

パソコンを打つ手が止まる。え、と彼女に聞き返すまでもなく、ことの顛末をぼくは理解した。

「ドリアンっておいしいの?」と、数週間前にぼくは職場のタイ人女性スタッフたちに尋ねた。からかい半分だった。なんと言っても、あの異臭だ。とくに女性があれを喜んで食べる姿など、ぼくには想像できない。

おいしいよ!食べたことないの?今度もってくるよ!と、次々に想定外の反応が出た。

ぼくは驚いたが、最後の「今度もってくるよ」の言葉に対しては懐疑的だった。なぜなら、あの異臭だ。公共の乗り物やホテルではドリアンの持ち込みが禁止されている。それを会社に持ってくることは不可能だと高をくくっていた。

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いま、そのドリアンがぼくの目の前にある。

それはまるで危険物のように、封筒に収納されている。そのなかでさらにビニール袋や新聞紙で何重にも包装されている。タイ人は、ドリアンを無難に持ち込む術を十分に心得ているようだ。

ドリアンは「果物の王様」と呼ばれている。果物は好きという人は多いけれども、その「王様」の味を知る日本人はほとんどいないだろう。タイに住めばその「王様」に会える。

いまからその「王様」の味を、まだ味わったことのない人びとに伝えるために、しっかりレポートさせていただきます。

 

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プラスチック容器ごとラップで包まれている。

容器のなかに、ドリアンが3房ほどある。不思議な気持ちがした。ぼくは目の前の果物を目でとらえながらも、それが生き物か何かではないかと考えている。

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手に取るのがすこしこわい。ただ、手に取るしかぼくには選択肢がなかった。

まるでフライドチキンを持っているようだ。明らかにそれと異なるのは、触感だ。濃厚なチーズケーキを素手でつかむような感覚で、指にはその果実が粘りつく。ぼくはその指で家具に一切触れないように気を遣いながら、ティッシュを数枚引き抜いた。

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どう食べていいのかわからない。なかに大きな種を数個含んでいる。とりあえず噛み切れそうなところを探し、角度を変えながら果実を食した。その食べ方はフライドチキンの食べ方そのものだった。

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唯一ちがうのは、ぼくがハムハム食べていることだ。ドリアンの果実はやわらかく、ねっとりしている。

ドリアンを食べるのは時間がかかる。もっと適切に言うのなら、時間をかけて攻略している、という表現になるだろう。これはスイカのようにシャリシャリと早食いする類の果物ではない。口のなかのねちょねちょしたものを、丁寧に喉に押し通しながら食べる新感覚のフルーツだ。

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ゴールが近づいている。早く終わってほしいと願う自分がいた。

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ついに種だけ残して完食。あと2房ほど残っているが、それは明日以降に取っておく。ドリアンは栄養価が高いが、一度に多量摂取すると命を落とす危険があるという。「果物の王様」の取り扱いには注意が必要だ。

 

肝心の味について、最後にお伝えします。

ドリアンの味は、バーベキュー風味のポテトチップスに似ている(そんなポテチがあったかどうかは知りません)。食べた瞬間、濃厚なポテチだと思った。すぐに水を飲みたくなるほどの濃厚さだ。

手に持つとフライドチキン、その触感と食感は濃厚チーズケーキ、味がバーベキュー風味のポテチ。ただし、その濃厚ポテチをとろとろと口のなかでこねていると、突然甘みと清涼感が口のなかに広がる。

その風味はまさに「果物の王様」。

どきっとして、その風味に意識を集中したとたん、またもとのバーベキュー味のポテチに戻る。

あの幻の味にもう一度会いたい。ぼくは「果物の王様」の味を想いながら、口のなかの濃厚ポテチを水で流しこんだ。