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30代サラリーマン応援ブログ。テーマ「仕事」「海外赴任・異文化」「英語学習」「家族」など

シドニーでのホームステイから学んだこと(異文化はどこにあるか?)

シドニーで2週間ホームステイをしたことがある。

ぼくを受け入れてくれたそのファミリーは、海外からのホームステイ希望者に対して自宅を開放し、市からの奨励金をもらうことで生計の足しにしているらしい。

一家の主である父親は過去の大きな事故による障害を抱えており、母親が暮らしを支えていた。中学と高校くらいの娘が2人いた。

その2週間、休日を除いて、ぼくは毎日語学学校に通った。

滞在先からバスで通い、その家族に教えてもらった通りの停留所で乗り降りし、支払いを済ませた。学校は中心街にあり、ランチタイムにはたくさんの人たちで賑わった。

 

空港に降り立ったとき、これからどんな毎日が待っているのだろうと、期待感でいっぱいだった。

海外には、短期の旅行でしか出たことがなく、生活するのは初めてだった。

きっと、すべてが刺激的で、新しい発見と、成長の日々にちがいない、と思ったりもした。

 

朝食でシリアルを食べ、バス停に向かう。バスに乗り、中心街へ着くと、語学学校で先生たちに挨拶をする。授業が始まる。お昼になると、学校近くのSubwayでおなかを満たす。午後からの授業は夕方で終わり、シドニーの中心街をすこし散策すると、食事に間に合うように家に帰った。

 

「海外旅行」と「海外での生活」は、根本的にちがっていた。旅行は毎日が刺激的だが、生活は日々淡々と進んでいく。

日本でも、シドニーに居ても、特に変わり映えなく日々が過ぎていくのかもしれない、とぼくは考えていた。

 

手荷物は多めに持っていったけれど、下着がそろそろなくなりそうになった。

下着は毎日、指定された洗濯カゴに入れていたのだけれど、家族の分も含め洗濯ものは溜まり続けるばかりで、洗濯される気配がなかった。

オーストラリアは、慢性的な水不足を抱えており、世界でもっとも乾燥している大陸と言われているらしい。水資源が貴重なので、きっと水道代も高い。

だからその家族は、洗濯ものをギリギリまで溜め込んで、一気に洗濯機をまわす。毎日こまごまと洗濯水をつかうよりも、そのほうが効率的なようだ。

もういよいよ替えがないな…というタイミングで、思い切ってその母親に相談したが、「そろそろまとめて洗濯するから大丈夫」と大らかに返したので、ぼくは信じて待つことにした。

洗濯ものは、ちゃんと間に合った。念のために多めに持ってきた下着の予備分で、なんとかしのぐことができて、ぼくはやっと安心した。

 

家庭では「洗濯は毎日するもの」と思い込んでいた。

オーストラリアの水事情に関してはすこしだけ予備知識があったけれども、それが人びとの生活にどう影響しているかを想定していなかった。

 

自分の「常識」や「思い込み」への気づきは、華やかなシドニー中心街でなく、滞在先の家庭での日常になかにあるものだとわかった。

 

最終日、ひょんなことから、ぼくは滞在先のファミリーの前で、自分の日本での住所と名前を漢字で書いた。

何気なく漢字を書くぼくの所作を見てファミリーが驚き、Fantastic!と感動していた。

日本人にはごくありふれた漢字の文字と、それを流れるように書き綴るという「ぼくにとっての常識」が、彼女たちには新鮮な驚きだったようだった。

 

異文化への気づきや発見は、こんな何気ないシーンのなかにこそあるものだと実感した。